大学生の子どもがいる家庭にとって、夏休みのアルバイト収入は毎年悩ましいテーマです。「稼がせすぎると扶養から外れて63万円の控除が消える」——この不安が、2026年から施行される 特定親族特別控除 によって大きく変わります。年収150万円までなら63万円の満額控除を維持できる新制度で、150万〜188万円は段階的に縮小しながらも控除が残る設計です。FinLaboでは、この新制度を「大学生の子を扶養する家庭が、7月時点で今年の稼ぎ方をどう設計すべきか」という視点から整理しました。
葵
特定親族特別控除とは何か(従来の扶養控除との違い)
特定親族特別控除は、2025年12月の税制改正で創設され、2026年分の所得から適用される新しい所得控除です。従来「特定扶養親族」として19歳以上23歳未満の子に対して63万円の扶養控除が認められていましたが、子のアルバイト収入が年103万円を超えた瞬間に控除がゼロになる崖の急さが長年問題視されてきました。今回の改正は、この崖を段階的なスロープに置き換える再設計と考えると理解が早いです。
対象要件:19歳以上23歳未満・合計所得123万円以下
対象となる「特定親族」は、その年12月31日時点で19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が123万円以下(給与収入のみなら188万円以下)の人です。年齢の下限は従来の特定扶養親族と同じですが、所得の上限が48万円から123万円まで大幅に引き上げられている点が最大の変化です。生計を一にしていること、青色事業専従者や白色事業専従者でないことは従来どおり必要になります。
従来の扶養控除63万円との位置づけ
子の合計所得が58万円以下(給与収入123万円以下)の場合は、これまでどおり「特定扶養親族」として63万円の扶養控除が使えます。合計所得が58万円を超えて123万円以下の範囲に入った時点で、扶養控除の枠を離れて特定親族特別控除に切り替わる二層構造です。控除額は所得帯によって63万円〜0円まで刻まれ、対象者本人ではなく扶養している親(納税者)側で控除される点は従来の扶養控除と共通しています。
年収別控除額シミュレーション(早見表)
実務で最も混乱するのが「あといくらまで働かせて大丈夫か」という具体額の判断です。給与収入と控除額の対応をまとめたのが以下の早見表です。給与所得控除を差し引いた合計所得金額ベースで判定されるため、給与収入から機械的に55万円(給与所得控除の最低額)を引く前提で整理しています。
| 子の給与収入 | 合計所得金額 | 親が使える控除 | 控除額 |
|---|---|---|---|
| 〜123万円 | 〜58万円 | 特定扶養控除 | 63万円 |
| 124万〜150万円 | 59万〜85万円 | 特定親族特別控除 | 63万円 |
| 151万〜160万円 | 86万〜95万円 | 特定親族特別控除 | 51万円 |
| 161万〜170万円 | 96万〜105万円 | 特定親族特別控除 | 41万円 |
| 171万〜180万円 | 106万〜115万円 | 特定親族特別控除 | 31万円 |
| 181万〜185万円 | 116万〜120万円 | 特定親族特別控除 | 21万円 |
| 186万〜188万円 | 121万〜123万円 | 特定親族特別控除 | 6万円 |
| 188万円超 | 123万円超 | 対象外 | 0円 |
※ 給与所得控除55万円を前提とした概算。実際は基礎控除や勤労学生控除の兼ね合いで微差が出るため、確定申告書等作成コーナーで再確認を推奨。
150万円までは63万円満額を維持できる
従来の103万円の壁を意識してシフトを組んできた家庭にとって、実務的な意味を持つのは「150万円までは満額」というラインです。給与収入150万円は合計所得85万円に相当し、この範囲までは63万円の控除がそのまま残ります。夏休み・春休みに集中的に働くタイプのアルバイトでも、年間150万円に収まれば親側の税負担は変わりません。
150〜188万円は段階的に縮小
150万円を超えると10万円刻みで控除が減っていき、188万円で0円になります。ここで重要なのは、給与収入が150万円を1円超えた瞬間に控除がゼロになるわけではないという点です。たとえば給与160万円でも41万円の控除が残り、親の所得税率が20%なら年8万円強の税軽減が維持できます。「もう扶養控除は使えないから」と早々に諦める必要はありません。
ひより
年末調整と確定申告、どちらで申請するか
特定親族特別控除は、給与所得者であれば原則として年末調整で完結します。ただし、控除の適用を受ける親が事業所得者や複数の給与を持つ場合、あるいは12月31日時点の子の所得を年末調整の書類締切に間に合わせて確定できない場合は、確定申告で調整することになります。
年末調整で申請する場合の記載欄
2026年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」および「基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書」に、新設される特定親族特別控除の記載欄が追加されます。子の見込み年収から合計所得金額を計算し、対応する控除額を記入する流れです。年末調整の書類を勤務先に提出したあとで子の収入が確定した場合、勤務先が再年調で調整するか、翌年に親が確定申告で修正します。
確定申告が必要になるケース
年末調整の締切後に子の年収が確定して控除額が変わった、親が個人事業主で年末調整の対象外、副業所得があって確定申告を予定している——これらのケースでは翌年2月〜3月の確定申告で特定親族特別控除を反映します。第一表の「扶養控除」欄の下に新設される控除欄を使用する予定で、e-Taxの入力画面も2026年分から更新される見込みです。
社会保険の「130→150万円」判定変更との連動
税制改正と並行して、2026年10月からは学生の被扶養者判定にも大きな変化があります。従来の130万円基準に加え、労働契約書ベースで年収150万円までは被扶養者として扱う特例が設けられ、税と社会保険の壁がおおむね連動する形に整理されました。学生本人が国民健康保険や国民年金の第1号被保険者に切り替わるタイミングも遅くなります。
労働契約書ベースの新判定とは
これまでの被扶養者認定は「過去の実収入」で判定するのが通例でしたが、新しい運用では労働契約書に記載された時給・所定労働時間から年収見込みを算出し、150万円以下なら継続的に被扶養者として扱うことになります。夏休みだけ短期的に稼働時間が伸びる学生アルバイトでも、契約書上の恒常的な労働条件が控えめであれば被扶養者資格を失いにくくなる設計です。
住民税・所得税への波及
住民税では、所得税と同様に特定親族特別控除に相当する調整控除が導入される見込みです(自治体条例の改正待ち)。所得税側で控除が段階的に縮小しても、翌年の住民税でも同じ段階減が反映されるため、家計側の負担感は税と社保の双方でなだらかに変わっていきます。「1円超えたら住民税だけ跳ね上がる」といった従来の不整合は解消される方向です。
7月時点で家族が話し合っておくべきこと
7月中旬は、大学生の夏休みバイトが本格化する直前のタイミングです。年初からの給与明細を集計し、あと何万円まで稼げるかを家族で共有しておくと、8月〜9月の稼働シフトを合理的に設計できます。特に「今年は3年生で就職活動が本格化する前に少し多めに稼ぎたい」といった年ごとの事情がある場合は、150万円ラインを意識するだけで税負担を最適化しやすくなります。
共働き世帯であれば、どちらの親の扶養に入れた方が節税効果が高いかも点検しておきたいところです。所得税率が高い側で控除を使う方が、家計全体の税軽減額は大きくなります。年末調整の直前になって慌てるのではなく、7月時点で世帯の見取り図を描き直しておくことが、2026年の新制度を活かす鍵になります。
まとめ:崖から坂道へ、150万円ラインを起点に設計する
特定親族特別控除は、大学生の子を扶養する家庭にとって「稼がせすぎたら控除が消える」という長年のプレッシャーを緩和する再設計です。150万円までなら63万円満額を維持、188万円までは段階的に控除が残る仕組みで、税と社会保険の判定も連動する方向で整理されました。7月時点で年初からの給与を集計し、年末までの稼働計画を家族で共有しておくことが、2026年の新制度を最大限に活かす近道です。
葵
税務・資産運用・ライフプランの実務を担い、FinLaboの全記事を監修。
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※ 本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。税制・社会保険制度は変更される可能性があります。最新情報は国税庁ホームページ・厚生労働省の告示等でご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談を提供するものではありません。


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