6月中旬から下旬にかけて、税務署から「予定納税額の通知書」が届いた個人事業主・フリーランスの方も多いのではないでしょうか。前年の所得税額が一定額を超えていると、今年の所得税を前払いする「予定納税」の対象になります。FinLaboでは、通知書の読み方から、業績が下がっている場合に使える「減額申請」、振替納税やダイレクト納付での支払い方まで、税理士&FP視点で整理します。
葵
予定納税通知書の見方——まず4つの数字を確認する
通知書が届いたら、いきなり納付を考える前に、記載内容を正しく読み取ることが第一歩です。
通知書に書かれている項目
予定納税通知書には主に次の情報が記載されています。
- 予定納税基準額(その年の所得税の見積もりベースとなる金額)
- 第1期分の納付額(基準額の3分の1)
- 第2期分の納付額(基準額の3分の1)
- 振替納税を登録している場合はその旨の表示
予定納税は、確定申告で1年分の所得税を精算する前に、その一部をあらかじめ2回に分けて前払いする仕組みです。第1期分・第2期分としてそれぞれ基準額の3分の1を納め、残りは翌年の確定申告で精算します。
誰に届くのか——基準額15万円のライン
予定納税の対象になるのは、前年の所得金額をもとに計算した「予定納税基準額」が15万円以上の人です。事業所得や不動産所得が一定規模ある個人事業主・フリーランスに加え、副業の所得が大きい会社員も対象になり得ます。給与所得者本人は年末調整で精算されるため対象外ですが、共働き世帯で配偶者側が事業所得を持つ場合、その配偶者宛てに通知が届くケースもあります。なお、特別農業所得者(農業所得が主たる所得の人)は納期の特例があり、第1期分が免除され第2期に基準額全額を一括納付する扱いになります。
業績が下がっているなら「減額申請」を検討する
予定納税基準額は前年の所得を基準に計算されるため、今年に入って売上が落ちている場合、前払いする金額が実態より重くなっていることがあります。そんなときに使えるのが「予定納税額の減額申請」です。
減額申請が使える3つのケース
国税庁のタックスアンサーによれば、減額申請は主に次のような事情でその年の所得税額が前年より明らかに少なくなると見込まれる場合に認められます。
- 廃業・休業・失業などで収入が大きく減った
- 業績悪化により売上・利益が前年を下回る見込み
- 災害・盗難・病気などで医療費控除や雑損控除が大きく増える見込み
「なんとなく今年は厳しそう」という感覚ではなく、7月〜11月時点での試算に基づいて、所得税額が前年より少なくなる根拠を示せることが前提になります。
申請書の提出期限と書き方
減額申請には期限があり、逃すと使えません。
- 第1期分・第2期分の両方について減額を求める場合:その年の7月15日まで
- 第2期分のみの減額を求める場合:その年の11月15日まで
提出書類は「予定納税額の減額申請書」です。年間の見積所得金額・見積税額の計算根拠を記入し、確定申告書と同様の様式で試算した上で税務署に提出します。国税庁の様式は改訂されることがあるため、提出時は必ず国税庁ホームページで最新版を確認してください。
ひより
振替納税・ダイレクト納付——払い方を選べる
減額申請をしない、あるいは申請が通らなかった場合でも、支払い方法を工夫することでキャッシュフローの負担を調整できます。
振替納税の引落タイミング
確定申告時に振替納税を登録している場合、予定納税もその口座から自動引き落としされます。振替納税を利用すると、納期限(第1期は7月31日、第2期は11月30日)当日に慌てて現金を用意する必要がなく、口座残高さえ確保しておけば手続きは完了します。ただし振替納税の実際の引落日は納期限そのものではなく、後ろ倒しで指定されるのが通例です。毎年の正確な振替日は国税庁が発表するため、通知書や税務署ホームページで確認しておくと安心です。
e-Tax×ダイレクト納付
振替納税を登録していない場合や、都度残高を見ながら納付日を選びたい場合は、e-Taxのダイレクト納付が便利です。事前に金融機関口座を登録しておけば、e-Tax上で納付日を指定してオンラインで即時または期日指定の口座引き落としができます。窓口に行く手間がなく、クレジットカード納付(手数料がかかる点に注意)と並んで、忙しい個人事業主に選ばれている方法です。
早見表で確認する——今年、自分はどう動く?
状況別に取るべき行動を整理すると、次のようになります。
| 状況 | 取るべき行動 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 今年の利益が前年並み・増加見込み | 通知額どおり納付。振替納税かダイレクト納付を選ぶ | 第1期 7/31・第2期 11/30 |
| 今年は前年より利益が大きく減る見込み | 減額申請書を提出して納付額を圧縮 | 7/15(第1期・第2期分) |
| 11月時点でさらに悪化・第2期分だけ減らしたい | 第2期分のみの減額申請 | 11/15 |
| 納付が資金繰り的に厳しい | 税務署に相談し換価の猶予等を検討 | 納期限までに要相談 |
減額申請の試算は、日々の記帳データが土台になります。
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どうしても払えないときの救済策
減額申請の要件に当てはまらなくても、資金繰り上どうしても納期限に間に合わない場合の選択肢もあります。
換価の猶予・延納
税務署に申請して認められれば、原則1年以内の分割納付が可能になる「換価の猶予」という制度があります。財産の差押えや公売を猶予してもらいながら分割で納める仕組みで、延滞税の一部が軽減される場合もあります。ただし原則として担保の提供が必要になるなど条件があるため、早めに税務署の窓口や税理士に相談することが重要です。
税理士に相談するタイミング
「今年の利益がどのくらい変わりそうか」を試算するには、期中の帳簿を確認して着地見込みを立てる作業が必要です。通知書が届いた6月時点で試算に不安がある場合は、7月15日の期限に間に合わせるためにも、早めに税理士へ相談するのがおすすめです。特に共働き世帯で配偶者の事業所得側に通知が届いたケースは、世帯全体の資金繰りにも関わるため、二人で早めに共有しておくと安心です。
葵
まとめ
予定納税通知書は「言われた額を払うだけ」のものではなく、業績や資金繰りに応じて減額申請・振替納税・分割相談といった選択肢がある制度です。まずは通知書の4つの数字を確認し、今年の見込みが前年より下がっているなら7月15日までの減額申請を検討しましょう。判断に迷う場合は、期限までに余裕をもって税理士に相談することをおすすめします。
ひより
税務・資産運用・ライフプランの実務を担い、FinLaboの全記事を監修。
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※ 本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。税制・制度は変更される可能性があります。最新情報は国税庁ホームページ等でご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談を提供するものではありません。


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