「確定申告は2月になってから考えればいい」——そう思っていると、1月下旬に書類を探し回る羽目になります。FinLaboが毎年目にするのは、領収書の山を前に途方に暮れる姿。実は、今(7月)から少しずつ準備を積み上げるだけで、来年の確定申告シーズンがまったく違う体験になります。この記事では、7月から始める確定申告準備の3ステップと、領収書・医療費・副業収支それぞれに最適な記録方法・ツールを実践的に解説します。

葵
7月から始める確定申告準備の3ステップ
確定申告の準備は、年間を通じた「記録の積み上げ」が本質です。2月から慌てて始めると、半年以上前のレシートの用途を思い出せなかったり、医療費の領収書がどこかへ消えていたりと、取れるはずの控除を取り逃がすことになります。7月のうちに仕組みだけ整えておけば、あとは流れに乗るだけ。
ステップ1:今年の確定申告が必要かを確認する
まず「そもそも自分は確定申告が必要か」を確認しましょう。以下のいずれかに当てはまる場合、確定申告が必要または有利になります。
- 給与収入が2,000万円超(年末調整の対象外)
- 2か所以上から給与を受けている
- 副業・フリーランス収入がある(年間所得20万円超で申告義務)
- 医療費控除・ふるさと納税(ワンストップ未利用)・住宅ローン控除初年度など還付申告したい
- 株式・投資信託の損失を繰り越したい
「申告義務はないが、還付が受けられる」ケースも多い点がポイントです。医療費が10万円を超えている年は必ず確認する習慣をつけましょう。
ステップ2:収支の種類別に記録方法を決める
確定申告で扱う収支は大きく3種類に分かれます。それぞれ記録方法が異なるため、今の時点で「どのツールで何を管理するか」を決めておくことが最重要です。
| 収支の種類 | 記録対象 | 推奨ツール |
|---|---|---|
| 領収書・経費 | 交通費・書籍・PC周辺機器など | 会計アプリ(マネーフォワード等) |
| 医療費 | 病院・薬局・処方せん代など | スプレッドシート or 無料アプリ |
| 副業収入・経費 | 売上・仕入・通信費・外注費など | 青色申告対応の会計ソフト |
3種類すべてを1つのアプリで管理しようとすると設定が複雑になりがちです。医療費だけはシンプルなスプレッドシートで管理し、副業は専用の会計ソフトを使う——という分担が現実的です。
領収書・レシートの整理方法
紙の領収書は「もらった瞬間」が管理の最大の山場です。財布に詰め込んで年末に一気に整理しようとすると、インクが消えたレシート・用途不明の領収書が山積みになります。今のうちにデジタル化のルーティンを作っておくことが、来年の自分への最大の贈り物になります。
紙の領収書をデジタル化する3つの方法
紙の領収書をデジタル化する方法は主に3つ。それぞれの特徴を整理しました。
| 方法 | コスト | 精度 | こんな人に |
|---|---|---|---|
| スマホカメラ+Google フォト | 無料 | △(手入力が必要) | 枚数が少ない・とにかく手軽に始めたい |
| 会計アプリのOCR読取(マネーフォワード確定申告・freee等) | 月額あり | ◎(自動仕訳対応) | 副業・フリーランスで枚数が多い |
| スキャナー+クラウド保存(ScanSnap等) | 機器代あり | ◎(高画質・一括処理) | 書類が多い・法人・電帳法対応が必要 |
副業がメインでなく、給与所得者が医療費控除や寄附金控除のために確定申告するケースなら、スマホカメラで撮影してフォルダ分けするだけで十分です。重要なのは「撮ったらすぐフォルダに入れる」ワンアクションの習慣化です。
電子取引のデータ保存義務(電帳法)の実務対応
2024年1月から、電子取引(オンラインで受け取ったPDF請求書・メール添付の領収書等)は電子データのままで保存することが義務化されています。紙に印刷しても法的要件を満たしません。
実務上の対応ポイントは以下のとおりです。
- ファイル名に日付・金額・取引先を含める(例:20260512_10800円_Amazonジャパン.pdf)
- 検索できる形式で保存する(Googleドライブ・Dropbox等のクラウドストレージが便利)
- 会計アプリの電帳法対応機能を使う(マネーフォワード確定申告・freeeはともに対応済み)
個人事業主・副業者は領収書を紙でもらう機会よりもオンラインで受け取る機会の方が多い傾向があります。クラウドストレージのフォルダを「年度別→月別」に設計しておくだけで、来年の申告が大幅に楽になります。
医療費控除の記録フォーマット
医療費控除は、年間の医療費が10万円(または総所得金額の5%の低い方)を超えると適用できる控除です。家族全員の医療費を合算できるため、1人ひとりでは10万円に届かなくても、家族合計なら超えるケースが多々あります。7月から記録を始めれば、年末に「超えているかどうか」をリアルタイムで把握できます。
10万円の壁と医療費の集計方法
医療費控除の対象となる費用の範囲は、思いのほか広いです。
- 病院・歯科・眼科・整骨院などの診察料・治療費
- 処方せんによる薬代(市販薬は原則対象外、ただしセルフメディケーション税制あり)
- 入院費用(差額ベッド代・食事代の自己負担分も一部対象)
- 通院のための交通費(電車・バス・タクシー※やむを得ない場合)
- 介護保険サービスの自己負担額(一定の要件あり)
- 妊娠・出産に関わる費用(定期健診・分娩費用等)
なお、健康保険組合から支給された「高額療養費」「傷病手当金」などは医療費から差し引く必要があります。医療費の「領収書合計額」がそのまま控除対象になるわけではない点に注意してください。
スマホで医療費を記録する最低限のフォーマット
医療費の記録に特別なアプリは必要ありません。Googleスプレッドシートに以下の列を作るだけで、確定申告書の「医療費控除の明細書」をほぼそのまま転記できます。
| 列名 | 入力例 | 補足 |
|---|---|---|
| 日付 | 2026/07/03 | 領収書の日付をそのまま |
| 医療機関名 | ○○内科クリニック | 薬局名も記載 |
| 対象者 | 本人・配偶者・長女(10歳) | 生計を一にする家族を合算可 |
| 医療費種別 | 診察・処方せん・通院交通費 | 明細書の区分に対応 |
| 金額(円) | 3,200 | 保険適用後の自己負担額 |
| 補填額 | 0 | 保険金・高額療養費等があれば記載 |
月末にその月の医療費をまとめて入力する習慣をつければ、年末に集計するだけで完成します。スマホのGoogleスプレッドシートアプリから入力できるため、病院の帰り道に記録するのが最もスムーズです。
副業収入・経費の帳簿付けをスタートする
副業をしている場合、年間の所得(収入−経費)が20万円を超えると確定申告が必要になります。「20万円を超えなければいい」と思って記録をつけないでいると、実際に申告が必要なラインに達した際に過去の経費を遡れなくなります。今から帳簿付けを始めることで、節税の機会損失を防げます。
青色申告 vs 白色申告の選択と今から始めるメリット
副業の帳簿付けには、青色申告と白色申告の2択があります。
| 青色申告 | 白色申告 | |
|---|---|---|
| 手間 | 複式簿記が必要(アプリで自動化可) | 単純な収支記録でOK |
| 節税メリット | 最大65万円の特別控除(電子申告の場合) | 控除なし |
| 赤字の繰越 | 3年間繰り越し可能 | 不可 |
| 事前手続き | 開業届+青色申告承認申請書の提出が必要 | 届出不要 |
副業収入が年間50万円以上ある、または将来的に規模を拡大したいと考えている場合は、今すぐ青色申告承認申請書を提出するのが得策です。申請は開業日から2ヶ月以内、または申告したい年の3月15日までに提出する必要があります。今から動けば2026年分の確定申告から青色申告が使えます。
無料ツール比較:マネーフォワード確定申告・freee・弥生
副業の帳簿管理に使えるクラウド会計ソフトを比較しました。いずれも無料プランまたはトライアルがあるため、まず試してから選ぶのがおすすめです。
| サービス名 | 無料プランの範囲 | 有料プラン(月額) | 特徴 | こんな人に |
|---|---|---|---|---|
| マネーフォワード確定申告 | 帳簿・仕訳の確認(申告書作成・ダウンロードは有料) | 月額980円〜 | 銀行・カード連携が強力。自動仕訳の精度が高い | 口座・カードが多い人。家計管理との一体化を望む人 |
| freee会計 | 30日間無料トライアル(全機能) | 月額980円〜 | 質問形式のウィザードで申告書作成まで完結。UI が直感的 | 簿記の知識がなく初めて使う人 |
| 弥生の青色申告オンライン | 1年間無料(セルフプラン) | 年額8,800円〜(2年目以降) | 老舗の安心感。インストール版との互換性あり。サポート体制が充実 | 電話サポートを使いたい人・弥生ユーザーの法人とやり取りがある人 |
副業がEC・フリーランス系で領収書の種類が多い場合は、銀行・クレジットカード連携の自動仕訳が強力なマネーフォワード確定申告が効率的です。一方、「そもそも帳簿って何?」という初心者には、freeeのウィザード形式が最もとっつきやすい設計になっています。弥生は1年間完全無料で使えるため、「とりあえず試してみたい」という段階で最もリスクが低い選択肢です。
まとめ:今すぐ仕組みを作るだけでいい
確定申告の準備は、特別な作業を今すぐ大量にこなす必要はありません。7月に整えておくべき「仕組み」は3つだけです。
- 領収書は撮ったらすぐフォルダへ(クラウドストレージのフォルダを今日作る)
- 医療費はスプレッドシートで月次記録(テンプレートを今日コピーして作る)
- 副業があれば帳簿ツールを1つ選んで口座連携を済ませる(1回の設定で1年間自動化)
来年2月に「あの領収書どこやったっけ」と焦る未来を回避するために、今日15分だけ時間を取る——それだけで確定申告の難易度は大きく変わります。

ひより
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスではありません。具体的な申告については税理士等の専門家にご相談ください。
税務・資産運用・ライフプランの実務を担い、FinLaboの全記事を監修。
※ 本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。税制・制度は変更される可能性があります。最新情報は国税庁ホームページ等でご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談を提供するものではありません。


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