「相続って、もっと先の話だよね……」そう思っているうちに、親が70代に差し掛かっていた。そんな40代が急速に増えています。
実は、相続対策を始めるベストタイミングは「親が元気なうち」。生前贈与には時間が必要で、遺言書や家族信託には親本人の意思能力が必要です。「そろそろ考えないと」と感じた今が、動き出す正しい瞬間です。
この記事では、生前贈与・遺言書・家族信託という相続対策の3本柱を比較し、どこから手をつければよいかを税理士の視点でまとめました。

葵
相続対策の3本柱:生前贈与・遺言・家族信託
それぞれの特徴と向いているケース
相続対策には大きく3つのアプローチがあります。それぞれ目的と効果が異なるため、自分の家族状況に合った選択が必要です。まずは全体像を比較表で整理します。
| 手段 | 主な目的 | 費用目安 | 手続き難度 | 税効果 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|---|
| 生前贈与 | 相続財産の圧縮 | 数万円〜(贈与税申告) | 低〜中 | ★★★★ | 相続財産が多く、早期から計画的に動ける |
| 遺言書 | 財産分配の明確化 | 0〜20万円程度 | 低(自筆)〜中(公正証書) | ★★ | 家族構成が複雑、財産を特定の人に集中させたい |
| 家族信託 | 財産管理の継続 | 50〜100万円程度 | 高 | ★★★ | 親が認知症になる前に資産凍結リスクを防ぎたい |
3つを組み合わせるのが基本戦略
相続対策は「どれか1つを選ぶ」ものではありません。生前贈与で相続財産を減らしながら、遺言書で分配を明確にし、認知症リスクが高まる時期に家族信託で財産管理を安定させる——この3層構造が基本戦略です。
特に不動産を保有している家庭では、生前贈与で現金を渡しつつ、不動産は家族信託で管理するという組み合わせが効果的。単独の対策より、複数を組み合わせることで隙間をなくせます。
生前贈与の基本と2024年改正後のルール
暦年贈与の110万円枠と相続時精算課税の使い分け
生前贈与には大きく2つの制度があります。
暦年贈与(110万円の非課税枠)
1月1日〜12月31日の1年間に、1人の受贈者が受け取った贈与の合計が110万円以下であれば贈与税がかかりません。毎年コツコツと財産を移転できる点が最大のメリット。親から子・孫へと複数人への贈与を組み合わせれば、年間数百万円単位の財産移転も可能です。
相続時精算課税制度
60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用できる制度。2,500万円までの贈与に贈与税がかかりません(超えた分は一律20%)。ただし、贈与した財産は相続時に相続財産に加算されるため、「節税」よりも「財産を早めに渡す」目的に向いています。2024年からは毎年110万円の基礎控除が新設され、使い勝手が向上しました。
| 項目 | 暦年贈与 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 非課税枠 | 年110万円 | 通算2,500万円+年110万円(2024年〜) |
| 相続時の扱い | 加算あり(7年以内分) | 全額加算(年110万超過分) |
| 節税効果 | 高い | 限定的 |
| 向いているケース | 長期的な節税目的 | 早期に大きな資産を渡したい |
2024年改正で変わった生前贈与加算期間(7年)
2024年1月から、相続前の暦年贈与が相続財産に加算される期間が3年から7年に延長されました。これが今回の改正で最も注意すべきポイントです。
具体的には、亡くなった日から遡って7年以内に行われた暦年贈与は、相続財産に加算されます(ただし4〜7年分は総額100万円まで控除あり)。つまり、亡くなる直前に慌てて贈与しても節税効果はほとんどなく、早期から計画的に行うことが必須になりました。
40代から始めれば、親が80代になるまでに十分な贈与期間を確保できます。「早すぎる」ことはなく、今始めることに明確な意味があります。
遺言書の種類と作り方
自筆証書遺言 vs 公正証書遺言の比較
遺言書には主に2種類あります。それぞれの特徴を理解した上で、親に合った形を選びましょう。
自筆証書遺言
本文・日付・氏名をすべて自筆で書き、押印するだけで作成できます。費用はほぼかからず、法務局の保管制度(1件3,900円)を使えば紛失・改ざんリスクも防げます。ただし、財産目録を除いてすべてを手書きしなければならないため、財産が多いと作成が大変。書き方に不備があると無効になるリスクもあります。
公正証書遺言
公証役場で公証人が作成する遺言書。証人2名が必要で、費用は財産額によって異なりますが数万〜20万円程度。内容に不備が出にくく、原本が公証役場に保管されるため安全性が高い。複雑な家族関係や大きな財産がある場合は、こちらを選ぶのが安心です。
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 費用 | ほぼ0円(保管制度3,900円) | 数万〜20万円程度 |
| 無効リスク | 書き方次第で無効になりうる | 低い |
| 証人 | 不要 | 2名必要 |
| 保管 | 自己管理 or 法務局 | 公証役場(原本) |
| 検認手続き | 必要(法務局保管は不要) | 不要 |
遺言書がないと何が困るか:具体的なトラブル例
遺言書がない場合、相続は「法定相続」または「遺産分割協議」で進めることになります。これが思わぬトラブルを招くケースは少なくありません。
ケース1:実家の処分で兄弟がもめる
親が亡くなって自宅不動産を相続した場合、相続人全員の同意がないと売却できません。兄弟の1人が「思い出の家だから売りたくない」と言えば、話し合いが長期化。最悪の場合、家庭裁判所での調停・審判に発展します。
ケース2:認知症の配偶者が相続人に含まれる
配偶者が認知症の場合、遺産分割協議に参加できないため、成年後見人の選任が必要になります。後見人が就くと管理は法的に縛られ、家族の意思通りに動けなくなることも。遺言書があれば協議不要で相続が完結します。
ケース3:再婚・前の配偶者との子が相続人に
親が再婚している場合、前婚の子も法定相続人。連絡が取れなかったり、関係が希薄だったりして協議が難航するケースが増えています。
家族信託の概要と活用場面
認知症対策として注目される理由
家族信託とは、財産の「管理・運用・処分」の権限を信頼できる家族(受託者)に委ねる法的な仕組みです。財産の所有権自体は変わらず、管理権限だけを移すため、贈与税は発生しません。
最大のメリットは、親が認知症になっても財産の凍結を防げる点にあります。
金融機関は口座名義人が認知症と判明した場合、預金の引き出しや定期の解約を制限します。不動産も「意思能力のない人の取引」として売買が困難に。しかし事前に家族信託を設定しておけば、受託者(子など)が親に代わって財産を管理・処分できるため、介護費用の支払いや実家の売却もスムーズに進みます。
成年後見制度との違いは「家族の自由度」。後見人は家庭裁判所の監督下に置かれるため、不必要な財産処分ができません。家族信託なら信託契約の範囲内で柔軟な対応が可能です。
信託設定にかかる費用の目安
家族信託の設定には、司法書士や弁護士などの専門家費用が必要です。DIYでできないわけではありませんが、信託契約書の内容が不完全だと後々トラブルになるケースが多く、専門家への依頼を強く推奨します。
| 費用項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 司法書士・弁護士報酬 | 30〜70万円 | 信託財産額・複雑さによる |
| 公正証書作成費用 | 3〜10万円程度 | 信託財産額により変動 |
| 不動産登記費用 | 5〜15万円程度 | 不動産が信託財産の場合 |
| 合計(目安) | 50〜100万円程度 | 資産規模が大きいほど割安感が出る |
費用だけ見ると高額に感じますが、相続トラブルで裁判沙汰になった場合の弁護士費用や、認知症で不動産売却が止まった際の機会損失と比べると、十分な投資といえます。
まとめ:40代からの相続対策ロードマップ
相続対策は「一度で完成させるもの」ではなく、段階的に積み上げるものです。40代から始めるなら、以下のステップが現実的です。
- Step 1(今すぐ):親の財産を把握する
不動産・預金・株式・保険など、親の財産全体像を把握。相続財産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えるかを確認します。 - Step 2(今年中):生前贈与を開始する
暦年贈与の110万円枠を使って贈与を始める。贈与契約書を毎年作成し、通帳の履歴でも記録を残すことが重要です。 - Step 3(親が70代前半のうちに):遺言書を作成してもらう
自筆証書遺言から始めて、後に公正証書遺言に格上げするのも一つの方法。まず「何も書いていない」状態を脱することが最優先です。 - Step 4(親の認知症リスクを感じたら):家族信託を検討する
特に不動産を多く持つ家庭では早めの検討を。信託設定は親の意思能力が必要なため、判断力があるうちに動くことが条件です。
相続は「争族」とも呼ばれるほど、家族関係に影響を与える出来事。早めの対策が、家族みんなの安心に繋がります。

ひより
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この記事はAIエージェント(葵)が生成し、税理士・FP1級資格保有者(ひより)が内容を確認・監修しています。税務・FPに関する最終的な判断は、ご自身または専門家にご相談ください。
税務・資産運用・ライフプランの実務を担い、FinLaboの全記事を監修。
※ 本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。税制・制度は変更される可能性があります。最新情報は国税庁ホームページ等でご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談を提供するものではありません。


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