「大学費用は500万円あれば足りる」と聞いて、学資保険と新NISAをどう組み合わせるべきか迷う共働き世帯は少なくありません。2026年7月時点で学資保険の返戻率は103〜107%、新NISAは生涯1,800万円まで運用益非課税と、それぞれ得意分野がまったく違います。FinLaboでは「税務控除込みの実効利回り」「取り崩し柔軟性」「万一の保障」の3軸で比較し、共働き夫婦が18年で500万円ゴールを作るための配分と名義戦略を整理しました。
葵
なぜ「500万円」ゴールなのか、大学費用の内訳を整理
日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」によると、大学入学から卒業までにかかる費用は進路によって大きく変わります。私立文系で下宿する場合は約850万円まで膨らむ一方、国公立・自宅通学の場合は500万円前後で収まるケースが多く、この差が「教育費500万円ゴール」というラインが目安になる背景です。
500万円で足りるケースと足りないケース
| 進路パターン | 大学4年間の目安総額 | 500万円で足りる? |
|---|---|---|
| 国公立・自宅通学 | 約450〜500万円 | ほぼカバー可能 |
| 私立文系・自宅通学 | 約550〜650万円 | やや不足(100万円前後) |
| 私立理系・自宅通学 | 約700〜800万円 | 不足(200〜300万円) |
| 私立文系・下宿 | 約850万円 | 大幅不足(350万円前後) |
500万円は「国公立・自宅通学であれば足りる基準」であり、私立や下宿を視野に入れる場合は追加で200〜300万円の備えが必要です。本記事では、進路が固まっていない0〜10歳のお子さまを想定し、まず「500万円という現実的な最低ライン」をどう作るかを整理します。
18年間で500万円を貯めるための月額目安
0歳から大学入学までの18年間で500万円を積み立てる場合、単純に貯金で作るなら月2万3,148円が必要です。ここに運用利回りを織り込むと、年率3%運用なら月1万7,600円、年率5%運用なら月1万4,300円まで負担を抑えられます。学資保険の低利回りだけに頼るか、新NISAの運用力を組み合わせるかで、家計の月額負担は月8,000円以上変わる計算です。
3軸フレームで比較する学資保険と新NISA
「学資保険と新NISA、どちらが得か」は単純な利回り比較では決められません。FinLaboでは以下の3軸でトータル評価することを推奨しています。
軸①:税務控除込みの実効利回り
学資保険は「一般生命保険料控除」の対象で、所得税で最大4万円・住民税で最大2万8,000円の所得控除が受けられます。所得税率20%・住民税率10%の世帯なら、年間の税負担軽減額は最大約1万800円。年間8万円払込の学資保険なら、控除効果だけで実質1.35%相当の上乗せです。返戻率107%の学資保険でも、他の一般生命保険で控除枠を使い切っていれば、控除の上乗せ効果はゼロになる点に注意が必要です。
新NISAは運用益に対する20.315%の課税が非課税になる仕組みで、所得控除はありません。年率5%で18年運用したときの複利効果を試算すると、300万円の元本が約720万円まで増える可能性があり、その運用益420万円がまるごと非課税。ただし想定通りに増えなかった場合は元本割れリスクが残ります。
軸②:大学入学タイミングでの取り崩し柔軟性
学資保険は満期時期があらかじめ固定されており、17歳・18歳・22歳など契約時に決めた年齢で祝金・満期金が受け取れます。逆に「大学入学が1年ずれた」「AO入試で早めに入学金が必要」といった変化には対応しにくく、途中解約すると元本割れするケースがあります。
新NISAはいつでも売却でき、翌年に非課税枠が復活する仕組み。ただし大学入学直前に相場が下落していれば、想定より少ない金額しか取り崩せません。相場変動リスクを避けるため、大学入学の3〜5年前から段階的に現金化しておくのが実務的です。
軸③:契約者に万一があったときの保障(払込免除)
学資保険には「契約者(親)が死亡・高度障害になった場合、以後の保険料払込が免除され、満期金は予定通り支払われる」という払込免除特約が付いています。これは新NISAにはない機能で、貯蓄と生命保険を1つの商品で兼ねている点が学資保険の大きな価値です。すでに掛け捨ての生命保険で必要保障額をカバーしている家庭なら重複になりますが、生命保険を絞っている場合は「教育費用の保障」として機能します。
ひより
500万円ゴールを18年で作る配分シミュレーション
3軸で整理したうえで、500万円ゴールに向けた具体的な配分を2パターンで試算します。年率5%運用は保守的な想定として、実際には市況に応じて上下します。
パターンA:学資保険200万円+新NISA300万円(バランス型)
| 項目 | 学資保険 | 新NISA | 合計 |
|---|---|---|---|
| 18年後の目標受取額 | 200万円 | 300万円 | 500万円 |
| 返戻率/想定利回り | 約105% | 年率5%(想定) | — |
| 月額払込目安 | 約8,800円 | 約8,600円 | 約1万7,400円 |
| 合計払込元本 | 約190万円 | 約186万円 | 約376万円 |
| 運用益・保険差益(18年) | 約10万円 | 約114万円 | 約124万円 |
相場が想定を下回っても、学資保険200万円分は確保できるため「最低ライン」が担保されます。共働き世帯の「片方に万一があっても学費は確保したい」というリスク許容度が低めの家庭に適した配分です。
パターンB:学資保険100万円+新NISA400万円(運用重視型)
| 項目 | 学資保険 | 新NISA | 合計 |
|---|---|---|---|
| 18年後の目標受取額 | 100万円 | 400万円 | 500万円 |
| 返戻率/想定利回り | 約105% | 年率5%(想定) | — |
| 月額払込目安 | 約4,400円 | 約1万1,400円 | 約1万5,800円 |
| 合計払込元本 | 約95万円 | 約246万円 | 約341万円 |
| 運用益・保険差益(18年) | 約5万円 | 約154万円 | 約159万円 |
掛け捨ての生命保険で必要保障額をすでに確保している家庭向けの配分。運用リスクを取れる分、同じ500万円ゴールでも月額負担を約1,600円軽くでき、うまく増えれば予備校費用など上振れに対応できる余力も生まれます。
共働き夫婦の名義配分、生命保険料控除を使い切るコツ
共働き世帯特有の論点が、契約者名義をどう振り分けるかです。学資保険と新NISAはそれぞれ「1人につき」の枠があるため、配偶者間で分担することで税務メリットを最大化できます。
一般生命保険料控除は「契約者ごとに4万円」まで
一般生命保険料控除は、所得税で最大4万円まで所得から差し引ける仕組みで、契約者ごとに独立して枠を持ちます。既に加入している終身保険や収入保障保険で年間8万円以上払込があると、片方の控除枠は使い切っており、そこに新たな学資保険を積んでも控除効果は追加されません。夫婦それぞれの給与明細と源泉徴収票を突き合わせ、「一般生命保険料控除の使用状況」を確認したうえで、控除枠に余裕のある側を学資保険の契約者にする設計が有効です。
名義配分のチェックリスト
配偶者間で契約者を振り分けるときは、次の3点を確認します。
- 一般生命保険料控除の枠:既契約で8万円以上払込があれば控除枠は使い切り。余裕のある側に学資保険を寄せる
- 所得税率:所得税率が高いほうを学資保険契約者にすると、同じ控除でも税負担軽減額が増える
- 新NISAの非課税枠:どちらか片方に集中させると生涯1,800万円で頭打ちになるため、教育費以外の運用も含めて配分する
特に所得税率が高い側は、同額の控除でも税負担軽減が大きくなります。夫婦の年収差が大きい世帯では、学資保険を「所得税率が高い側」に、新NISAを「所得税率が低い側」に寄せる名義戦略も検討の余地があります。
FinLaboの結論と実行ステップ
500万円ゴールを18年で作るなら、学資保険と新NISAの「どちらか一択」ではなく「税務メリットと保障で使い分けたハイブリッド」が現実的です。生命保険料控除の余裕と、既存の生命保険による保障重複をまず棚卸しし、そのうえでバランス型(パターンA)か運用重視型(パターンB)を選ぶのがFinLaboの推奨アプローチです。
いま始めるならこの順で
- 配偶者それぞれの源泉徴収票で「一般生命保険料控除」の使用額を確認する
- 掛け捨ての生命保険で必要保障額がすでにカバーされているかチェック(保障重複を避ける)
- 控除枠に余裕のある側の名義で、パターンAまたはBの月額を試算
- 新NISAは大学入学の3〜5年前から段階的に現金化する運用計画をセット
教育費の準備は、家計全体の保障設計と切り離せません。夏のボーナスシーズンは、生命保険と積立の全体像を見直す絶好のタイミングです。
葵
税務・資産運用・ライフプランの実務を担い、FinLaboの全記事を監修。
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※ 本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。税制・制度・市況は変更される可能性があります。学資保険の返戻率や新NISAの制度は最新情報を各社公式サイト・金融庁ホームページ等でご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・投資相談を提供するものではありません。


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