2026年7月1日、国税庁から2026年分の路線価が公表されました。相続税・贈与税の土地評価の基礎となる指標で、この一年間に開始する相続に使われる評価額が確定した瞬間です。ここ数年、都心・地方主要都市の商業地は前年比で上昇が続く一方、地方の住宅地は横ばいから微減が続いています。FinLaboでは、この年に一度の「鮮度が最も高いタイミング」を利用して、実家を将来相続する30〜50代の読者向けに、税額のシミュレーションと今からできる備えを整理します。
葵
路線価とは?公示地価・実勢価格との関係
路線価は、国税庁が毎年7月1日ごろに公表する、道路に面する宅地1平方メートルあたりの評価額です。相続税・贈与税を計算するときの土地の評価に使う指標で、その年の1月1日時点の価格をベースにしています。ニュースで耳にする「公示地価」や「実勢価格」とは目的も水準も異なるため、まずは土地の4つの価格の関係を整理しておきましょう。
路線価は公示地価のおよそ80%が目安
路線価は、公示地価に対して概ね80%の水準になるよう設定されています。相続税評価は納税者に過度な負担を強いないよう、実勢からある程度のバッファを取っているという理解でよいでしょう。土地には目的別に4つの価格が存在し、混同すると税額の見立てを大きく外します。
| 価格の種類 | 公表主体 | 目的 | 公示地価との比率 |
|---|---|---|---|
| 公示地価 | 国土交通省 | 土地取引の指標 | 100% |
| 基準地価 | 都道府県 | 公示地価の補完 | ほぼ同水準 |
| 路線価 | 国税庁 | 相続税・贈与税評価 | 約80% |
| 固定資産税評価額 | 市町村 | 固定資産税・都市計画税 | 約70% |
7月1日公表という「今」のタイミング
路線価は毎年7月1日前後に公表され、その年に開始する相続の評価に使われます。つまり2026年7月から2027年6月に発生する相続については、この2026年分路線価がベースになります。相続対策は「まだ先」と感じる読者が多い一方で、両親が60〜70代なら10〜15年後には現実になる可能性が高い分野です。年に一度、この鮮度が高いタイミングに合わせて、実家の評価を仮計算しておくのは合理的な習慣といえます。
実家の相続税評価額の基本計算
相続税を試算する第一歩は、土地と建物それぞれの評価額を求めることです。土地は路線価、建物は固定資産税評価額を使うのが原則。ここでは、実家を「土地40坪(132平方メートル)+築25年木造」と仮定して、路線価水準別のイメージを掴んでおきましょう。
土地の評価は「路線価×面積×補正率」
もっとも基本的な計算は「路線価(円/平方メートル)×土地面積×補正率」です。補正率は、奥行きが長い・不整形・角地といった土地の個別事情に応じて0.85〜1.05程度で微調整されます。まずは補正率1.0で概算し、後述する小規模宅地等の特例を当てはめて減額を判断する流れが実務的です。
路線価水準別・実家の土地評価額イメージ(40坪=132平方メートル)
| 路線価水準の目安 | 該当しやすいエリア例 | 132平方メートルの評価額 |
|---|---|---|
| 10万円/平方メートル | 地方中核市の郊外住宅地 | 1,320万円 |
| 20万円/平方メートル | 県庁所在地の一般住宅地 | 2,640万円 |
| 40万円/平方メートル | 政令市の人気住宅地 | 5,280万円 |
| 60万円/平方メートル | 東京23区の郊外住宅地 | 7,920万円 |
| 100万円/平方メートル | 都心近接の高級住宅地 | 1億3,200万円 |
実家の路線価は、国税庁ウェブサイトの「路線価図・評価倍率表」から住所検索で簡単に確認できます。まずは概算のイメージを掴み、正確な数値は税理士に依頼するというステップで十分です。
小規模宅地等の特例で最大80%減
実家の相続税を考えるうえで、もっとも影響が大きいのが「小規模宅地等の特例」です。被相続人が居住していた宅地を、一定の要件を満たす親族が相続した場合、330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます。上の早見表で「7,920万円」だった実家の土地評価が、この特例を使えると「1,584万円」まで下がる計算になります。
ひより
特定居住用宅地の要件を子が使えるか判定表
| 相続する子の状況 | 特例適用可否 | ポイント |
|---|---|---|
| 親と同居していた子 | ◎ 適用可 | 相続後も居住継続し、申告期限まで保有 |
| 別居・自己所有の持ち家あり | × 適用不可 | 持ち家に住んでいるため対象外 |
| 別居・賃貸住まい(過去3年持ち家なし) | ◎ 適用可(家なき子特例) | 3親等内親族の持ち家に住んでいないなど追加要件あり |
| 配偶者(親の残された側) | ◎ 適用可 | 要件なしで80%減が使える |
「家なき子特例」は要件が細かい
実家を離れて共働きで暮らしている読者に関わりが深いのが「家なき子特例」です。相続開始前3年以内に、自分または配偶者・3親等内親族・特別関係のある法人が所有する家屋に住んでいないなど、複数の細かい条件があります。賃貸暮らしなら基本的には対象ですが、社宅や親名義の家に住んでいる場合はアウトになるケースもあるため、事前確認が欠かせません。
生前贈与・相続時精算課税・家族信託の比較
路線価が高いエリアの実家では、相続税評価額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えるケースが増えます。事前に取れる打ち手として、暦年贈与・相続時精算課税・家族信託の3つを整理しておきましょう。
2026年時点の暦年贈与ルール
暦年贈与は1人あたり年間110万円までなら贈与税がかかりません。ただし2024年以降、相続開始前の「加算対象期間」が段階的に3年→7年へ延長されました。相続直前の駆け込み贈与は加算対象になるため、両親が元気なうちからコツコツ実行するのが基本戦略です。
相続時精算課税制度と家族信託の使い分け
| 制度 | 使いどころ | 注意点 |
|---|---|---|
| 暦年贈与 | 長期スパンでコツコツ移転 | 加算対象期間が7年に延長中 |
| 相続時精算課税 | まとまった金額を早めに移転、2024年以降は年110万円の基礎控除も併用可 | 一度選択すると暦年贈与へ戻れない |
| 家族信託 | 認知症リスクへの備え・実家の管理権限を子に移す | 信託契約書の設計コストと専門家関与が必要 |
「今すぐ税額を下げたい」なら暦年贈与、「まとまった金額を今のうちに動かしたい」なら相続時精算課税、「親が認知症になっても実家を売却・管理できる状態にしたい」なら家族信託、というのが大まかな役割分担です。3つを組み合わせるケースも多く、実家の路線価と両親の年齢を踏まえて優先順位を決めるのが実務的なアプローチになります。
この夏、親と話しておきたい3つのこと
路線価が公表される7月〜8月は、帰省や電話で相続関連の話題を切り出しやすいタイミングです。重い話題として避けられがちですが、「路線価が発表されたから」という切り口なら、両親も構えずに応じてくれる可能性があります。優先度が高い3項目を紹介します。
登記簿・預貯金・遺言の3点セット
- 登記簿の確認:実家の名義が両親のどちらか、それとも共有か。祖父母の名義のまま残っていないか。相続登記は2024年4月から義務化済で、放置すると過料の対象になります
- 預貯金・保険口座の棚卸し:どの金融機関にどの程度の資産があるか、簡単なリストだけでも共有しておく。使っていない口座は解約整理を提案するとスムーズです
- 遺言書の有無と保管場所:自筆証書遺言は法務局の保管制度が利用できます。公正証書遺言なら紛失リスクがなく、争族の予防にも有効です
親側の視点も忘れずに
子側の相続対策は、親からすれば「自分の死を前提に話される」ことでもあります。切り出す時期・話の順番によっては関係がぎくしゃくすることも珍しくありません。FinLaboで推奨しているのは、「まず自分たち世代のライフプラン(住宅ローン・教育費・老後資金)を話題にし、その延長線上として実家の話に触れる」流れです。目的は税額最適化ではなく、家族の資産を次の世代へスムーズに引き継ぐこと、という共通認識をつくることが最優先といえるでしょう。
まとめ
2026年分路線価の公表は、実家の相続を「まだ先の話」から「試算できる現実」に引き寄せる年に一度のタイミングです。まずは実家の路線価を国税庁サイトで確認し、土地評価額の概算を出す。次に小規模宅地等の特例が使えるかを判定表でチェックし、必要に応じて暦年贈与・相続時精算課税・家族信託の組み合わせを検討する。この夏の帰省で登記簿・預貯金・遺言の3点を確認できれば、税額対策としても家族の合意形成としても大きな一歩になります。
葵
税務・資産運用・ライフプランの実務を担い、FinLaboの全記事を監修。
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※ 本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。税制・制度は変更される可能性があります。最新情報は国税庁ホームページ等でご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談を提供するものではありません。


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