「資格を取りたい」「学び直してキャリアを変えたい」と思ったとき、まず気になるのが費用の負担です。実は雇用保険に加入している人なら、講座費用の最大80%が戻ってくる「教育訓練給付金」という制度があります。2024年10月の改正で給付率と上限が拡充され、対象講座も広がりました。ただし一般・特定一般・専門実践の3種類があり、自分がどれに当てはまるか、手続きはどう進めるかが分かりにくいのも事実です。FinLaboでは3制度の違いと、給付を受けるまでの実務フローを整理します。
葵
教育訓練給付金の全体像——似た名前の制度と混同しない
教育訓練給付金は雇用保険の制度で、対象講座を受講・修了した人に受講費用の一部が支給される仕組みです。混同されやすい制度が2つあるため、まず整理しておきます。
教育訓練給付金・教育訓練支援給付金・教育訓練休暇給付金の違い
「教育訓練給付金」は受講費用そのものを補助する制度です。一方「教育訓練支援給付金」は専門実践教育訓練を受講中の離職者に対する生活費補助(基本手当の一定割合)で、対象者が限られます。さらに「教育訓練休暇給付金」は在職中に無給の教育訓練休暇を取得した人への賃金補償で、受講費用ではなく休暇中の収入減を補う制度です。この記事で扱うのは、受講費用そのものが戻ってくる「教育訓練給付金」です。
なぜ2024年10月の改正が大きいのか
2024年10月の制度改正で、特定一般教育訓練給付金は上限が20万円から25万円に、専門実践教育訓練給付金は給付率の上限が70%から80%に引き上げられました。加えて、資格取得や就職に加えて「早期のキャリア形成」につながる場合の追加給付も新設され、リスキリングを後押しする方向で制度が拡充されています。7〜9月は秋期講座の申込が本格化する時期でもあり、対象講座を検討している人は改正後の給付率で試算し直す価値があります。
3タイプの給付率・上限を一枚で比較する
教育訓練給付金は「一般」「特定一般」「専門実践」の3タイプに分かれ、対象講座のレベルに応じて給付率・上限が変わります。
マトリクスで見る給付率・上限・対象講座
| タイプ | 給付率 | 上限額 | 対象講座の例 |
|---|---|---|---|
| 一般教育訓練給付金 | 20% | 10万円 | 簿記・TOEIC対策・ITパスポート等の資格・語学講座 |
| 特定一般教育訓練給付金 | 最大50% | 25万円 | 宅建士・介護支援専門員・ITSSレベル3以上の講座等 |
| 専門実践教育訓練給付金 | 最大80% | 年間64万円(3年で最大192万円) | 看護師・美容師等の専門職養成課程、MBA、専門職大学院等 |
専門実践教育訓練給付金の80%は、基本給付(50%)に加えて、修了後に資格取得かつ就職につながった場合の追加給付(20%)、さらに一定の要件を満たす早期のキャリア形成に対する上乗せ(10%)を積み上げた数字です。基本給付だけを受け取るケースもあるため、80%を前提に資金計画を立てるのは危険です。
給付率だけで選ぶと総支払額で損することがある
給付率が高い専門実践教育訓練は魅力的に見えますが、対象講座はもともとの受講料が高額で、修了までの期間も1〜3年と長期にわたるケースが多いのが実情です。一般教育訓練は給付率こそ20%ですが、講座自体の総額が数万円程度のものも多く、実質負担額で比較すると一般教育訓練の方が安く済む場合もあります。給付率ではなく「受講料総額×(1−給付率)」で実質負担を計算してから選ぶことが大切です。
ひより
自分はどれに該当する?——ケース別に確認する
制度の全体像を踏まえて、典型的な3つのケースで当てはまるタイプを確認してみます。
会社員がIT研修・DX関連資格を取る場合
在職中の会社員がITパスポートや基本情報技術者、簿記2級などの資格取得を目指す場合の多くは一般教育訓練給付金の対象です。給付率は20%とやや低めですが、通信講座やeラーニングでも対象講座が多く、働きながら申し込みやすいのが特徴です。会社の休職制度を使わずに受講できる講座がほとんどのため、まず自分の受けたい講座が対象講座リストに載っているかを確認するところから始めます。
転職・キャリアチェンジを見据えてMBAや専門職大学院を検討する場合
看護師・美容師などの専門職養成課程や、一部のMBA・専門職大学院は専門実践教育訓練給付金の対象です。受講期間が長く、離職して通学するケースもあるため、雇用保険の被保険者期間や、離職者の場合は基本手当との関係も含めて事前確認が必要です。給付額が大きい分、ハローワークでの事前手続きも複雑になるため、早めに情報収集を始めることが重要です。
受給までの実務フロー
教育訓練給付金は、講座を修了すれば自動的に振り込まれるわけではありません。事前手続きの有無を含め、正しい順番で進める必要があります。
ジョブカード作成とキャリアコンサルティング
特定一般・専門実践教育訓練給付金を受ける場合、受講開始前にジョブカードを作成し、ハローワークが指定する機関でキャリアコンサルティングを受ける必要があります。この事前手続きを済ませないまま受講を始めると、給付金を受け取れなくなるため、講座の申込前に必ずハローワークで受給資格の確認を行うことが必須です。一般教育訓練給付金はこの事前手続きが不要ですが、受講開始日の1か月前までに雇用保険の被保険者期間等の要件を満たしているか確認しておくと安心です。
受講開始から給付金申請までの流れ
受講を開始したら、講座を修了した後にハローワークへ支給申請を行います。専門実践教育訓練給付金は6か月ごとに追加の支給申請を行う仕組みがあり、修了後の資格取得・就職状況に応じて追加給付分を別途申請する必要があります。申請には受講証明書や領収書、資格取得を証明する書類などが必要になるため、講座機関から発行される書類は必ず保管しておきます。
給付金の税務上の扱いと見落としがちな落とし穴
給付を受ける前に、税務上の扱いと制度上の注意点も押さえておきます。
教育訓練給付金は非課税・確定申告は原則不要
教育訓練給付金は雇用保険法に基づく給付金であり、所得税・住民税ともに非課税です。会社員が受給しても年末調整に影響はなく、原則として確定申告で申告する必要もありません。ただし、勤務先によっては講座費用を会社が一部負担している場合、その負担額と給付金の関係を勤務先の経理担当者と確認しておくとトラブルを避けられます。
雇用保険の被保険者期間・重複受給に注意
教育訓練給付金を受けるには、雇用保険の被保険者期間が一定年数以上必要です。初めて受給する場合は通算1年以上、過去に受給歴がある場合は前回の受給から3年以上経過していることが条件になります。転職や離職で雇用保険の空白期間があると、通算期間がリセットされることがあるため、離職を挟んでキャリアチェンジを検討している人は、受給要件を満たしているか事前にハローワークで確認しておくことをおすすめします。
葵
まとめ
教育訓練給付金は一般・特定一般・専門実践の3タイプに分かれ、対象講座や給付率、事前手続きの要否がそれぞれ異なります。給付率の高さだけで選ぶのではなく、実質負担額と手続きの手間を含めて比較することが大切です。特定一般・専門実践を検討する場合は、受講開始前のジョブカード作成とキャリアコンサルティングを忘れずに、早めにハローワークへ相談しましょう。
ひより
税務・資産運用・ライフプランの実務を担い、FinLaboの全記事を監修。
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※ 本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。税制・制度は変更される可能性があります。最新情報は国税庁ホームページ等でご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談を提供するものではありません。


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