2026年に入り、日銀の追加利上げを受けて住宅ローン変動金利の上昇が現実のものになっています。主要メガバンクの変動金利は2024年までの0.345〜0.475%水準から、2026年6月時点で実質1.0%に迫る圏まで到達。これまで変動金利契約者の前提だった「固定との金利差1.5%前後」が一気に縮みました。
本記事は、2020〜2025年に変動金利で住宅ローンを組んだ世帯に向けて、固定への切替を迷うときの判断軸を 残期間・残債規模・繰上返済余力 の3つに整理します。「いま借換すべきか」「もう少し様子を見るか」のグレーゾーンに具体的な目安を持ち込むことを目的にした構成です。
葵
日銀利上げで住宅ローン金利2026はどう動いたか
住宅ローン金利の動きを把握するには、日銀政策金利と、その影響を受けて動く短期プライムレートの推移を押さえることが出発点になります。一般に 変動金利は短プラ連動・固定金利は長期金利(10年国債利回り)連動 と覚えるのが基本です。
主要銀行の変動金利動向(2024〜2026)
主要メガバンクとネット銀行の変動金利は、2024年7月の利上げ(0.10%→0.25%)、2025年1月の利上げ(0.25%→0.50%)、そして2026年初頭の追加利上げを受けて、優遇後ベースで以下のように上昇しました。
| 時期 | 主要メガバンク(優遇後) | ネット銀行の低位水準 | 政策金利 |
|---|---|---|---|
| 2024年6月 | 0.345〜0.475% | 0.219〜0.319% | 0.10% |
| 2025年6月 | 0.595〜0.725% | 0.469〜0.569% | 0.50% |
| 2026年6月 | 0.845〜0.975% | 0.719〜0.819% | 0.75%(市場想定) |
新規契約だけでなく、既存契約の適用金利も 半年に1回(4月・10月)の見直しタイミング で順次引き上げられています。返済額は5年ごとの見直しと1.25倍ルールで急変こそ抑えられますが、その分 未払利息が水面下で積み上がる リスクが意識されるフェーズに入りました。
固定金利との金利差はどこまで縮んだか
同時期の固定金利(フラット35や民間長期固定)は、長期金利の上昇を受けて2.0〜2.3%水準へ上昇しています。変動と固定の差は、2024年時点の約1.5%から、2026年6月時点では 約1.0〜1.3% まで縮小。さらに日銀の追加利上げが市場コンセンサスとして残っており、変動金利は今後も段階的に上昇する前提で考えるのが妥当な局面です。
切替判断の3軸|残期間・残債・繰上返済余力
固定への切替を「足元の金利差」だけで判断すると見誤ります。実際の損益は、残期間の長さ・残債の大きさ・将来の繰上返済余力の3つで決まります。順に整理します。
軸1 残期間:あと何年返済するかで金利感度が変わる
残期間が長いほど、金利上昇が利息総額に与える影響は大きくなります。残期間20年以上の契約であれば、変動金利が今後さらに+0.5〜1.0%上昇するシナリオで、固定への切替が利息総額で逆転するラインは比較的近いところに来ます。逆に残期間10年以下なら、変動の金利感度は限定的で、切替コストを回収しきれないケースが増えます。
軸2 残債規模:1%の差が生む利息総額
残債が大きいほど、金利1%の差は重みを増します。残債3,000万円・残期間25年の契約で金利が1%上昇すると、単純試算で利息総額が 約450万円 増えます。一方、残債1,000万円・残期間10年なら同じ1%上昇でも利息差は 約55万円 程度に収まります。実務的な感覚としては、残債2,000万円超が「切替を本気で検討する」一つの目安です。
ケース別シミュレーション|残期間×残債で見る損益分岐
3軸の感覚をつかむため、典型2ケースで試算します。前提は「現在の変動金利1.0%」「切替先の固定金利2.2%」「以後30年で完済」。借換諸費用は残債の約2%(保証料・登記費用・印紙等)として概算しています。
ケースA 残期間25年・残債2,500万円(30代世帯)
変動が今後+0.5%上昇するシナリオでは、変動継続時の利息総額は固定切替時より約290万円少なく済む試算です。一方、+1.0%上昇シナリオでは差はほぼ拮抗し、+1.5%まで進めば固定切替のほうが約280万円有利になります。借換諸費用(約50万円)を差し引いた後の数字です。
| 変動金利シナリオ | 変動継続・利息総額 | 固定切替・利息総額 | 差額(諸費用控除後) |
|---|---|---|---|
| 横ばい(1.0%継続) | 約340万円 | 約820万円 | −530万円(変動有利) |
| +0.5%(1.5%へ上昇) | 約580万円 | 約820万円 | −290万円(変動有利) |
| +1.0%(2.0%へ上昇) | 約850万円 | 約820万円 | −20万円(ほぼ拮抗) |
| +1.5%(2.5%へ上昇) | 約1,150万円 | 約820万円 | +280万円(固定有利) |
ケースB 残期間15年・残債1,200万円(40代世帯)
残期間が短い40代世帯では、変動+1.5%シナリオでも固定切替との差は概ね60万円程度に収まります。諸費用と団信再加入のリスクを考えると、無理に切り替えるより 繰上返済で残債を早期に圧縮する 戦略が優位になりやすい層といえます。
ひより
団信・3大疾病特約のハードル|切替で失うもの
切替判断で見落とされがちなのが、団体信用生命保険(団信)と3大疾病特約の扱いです。借換は「新規ローンを組み直す」手続きなので、団信に 再加入 が必要になります。
既存契約の団信・特約条件をまず確認
変動金利の契約時に「3大疾病50%保障」「全疾病保障」「がん100%保障」などの上乗せ特約を金利0.1〜0.3%上乗せで付けているケースが多くあります。借換時にはこれらの特約が 当然には引き継がれず、借換先の商品ラインナップと健康告知をクリアできるかが分かれ目になります。
固定借換時の団信再加入と健康告知
契約から数年が経過し、健康診断で要再検査・治療履歴がついている場合は、団信に加入できず借換そのものが頓挫することもあり得ます。健康面に不安要素がある場合は 固定切替を先送りせず、団信が通る今のうちに動く という判断軸が逆に有効になることも知っておきたいポイントです。
一部繰上返済との組み合わせ|「半分固定化」という選択肢
固定への全面切替が大袈裟に感じる場合は、一部繰上返済で残債を圧縮してから判断する選択肢があります。これは「金利感度そのものを下げる」アプローチで、変動を維持しながらリスクを軽減できる中間策です。
繰上で残債を圧縮してから判断する
たとえば残債2,500万円・残期間25年の世帯が500万円の繰上返済を行うと、残債2,000万円・残期間約20年に縮みます。この時点で改めて切替シミュレーションを回すと、変動継続でも利息総額の不確実性が大幅に下がり、固定切替の必要性自体が薄れることが多いです。共働き世帯で 住宅ローン控除を2人で取っている ケースでは、控除終了後(11〜13年目以降)に繰上を集中させる設計も有効な選択肢になります。
借換手数料・諸費用の損益分岐
借換諸費用は残債の約2%(保証料・登記費用・事務手数料・印紙税)が目安。残債2,000万円なら約40〜50万円の前払いが必要です。この諸費用を回収するには 金利差で年間20万円以上の節約 を5年以上維持できる水準が前提となるため、変動の今後の上昇幅をどう見るかが鍵を握ります。
葵
まとめ|「金利差」だけで決めず、3軸+団信で総合判断
2026年の日銀利上げ局面で変動から固定への切替を迷う場合、判断軸は「残期間20年以上か」「残債2,000万円以上か」「繰上返済余力があるか」の3つに整理できます。これに加えて団信・特約の再加入可否を確認することで、見落としのない判断が可能になります。
残期間が短い・残債が小さい層は、繰上返済で金利感度を下げる戦略が有効。一方、残期間25年以上・残債3,000万円超の層では、変動+1.0%以上のシナリオを織り込むなら固定切替の合理性が高まります。ペアローン・連帯債務で組んでいる場合は、2人それぞれの団信再加入条件を揃えて検討する必要がある点にもご注意ください。
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※ 本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。金利動向・諸費用・税制・各金融機関の商品内容は変更される可能性があります。借換・繰上返済の判断はご自身の契約条件と最新の金融機関情報を確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
税務・資産運用・ライフプランの実務を担い、FinLaboの全記事を監修。


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